逃避行

映画・小説・舞台・音楽

終わりを知っている始まり。

このタイトルを聞いて、今までの私ならきっと、入学という言葉を思い出す。

入学したと同時に卒業へのカウントダウンが始まり、

卒業するときにいかに満足感や幸福感を抱くことができるか、いかに良い人間関係が築けるか、いかに成長できるかが問われる試練の始まり。

 

しかし、私はこのタイトルを見て最初に思うのは今もこれからも彼女たちしかいない。

 

 

彼女たちはある挑戦をすることに決めた、夢のために。

 

 

彼女たちには、過去があった。

希望を抱いて夢を追い続け、1度、夢を叶えているのだ。

しかし、その先には描いていたものと違う現実が待ち受けていた。

努力だけではどうにもならない厳しい環境が彼女たちに突きつけられたのだ。

少女たちは学生の世界とはまるで違う大人の世界を目の当たりにする。

知識も経験もないまま夢を叶えてしまった少女たちは、大人の言いなりになることしか許されなかった。

自分の心の奥底からやりたいことができないもどかしさ。

相当苦しいはずである。

ここで逃げたり諦める人たちはたくさんいる。

その方が幸せになることだって十分にある。

たくさん悩んで、逃げたり諦めたりすることを選ぶのは勇気のいる立派なことだから。

 

だけれど、彼女たちは諦めなかった。

そして、再起をかけて難しい競い合いをすることを選んだ。

競争の中では順位がつけられ、低い者から脱落していくという恐怖がある。

順位のために、短期間で自分の全てを出し切らなければならない焦りも。

その上、評価が目に見えてわかり、SNS上では評価する多数の匿名コメントが溢れる。

なかには、もちろん心ない言葉がたくさん出てくる。

それらのために精神を病んだり、性格が歪んで自分を台無しにしたりする可能性も大いにある。

それでも、その茨の道を選択した。

そこまでして夢を夢のまま終わらせたくないという覚悟を見せていた。

 

 ”サバイバル”が始まり、一緒に頑張ってきた仲間が次々と脱落していくことの辛さで涙が止まらなくなるくらいに頑張ってきたと同時に、人間としての大切な心も失わずに競争を続けてきた。

 

そして、上位9名が63人の仲間の思いを胸に、期間限定で精鋭隊として夢に近づくために新たなる門を叩いた。

 

彼女たちはもう少女ではなく、経験を積んだ立派な大人になっていた。

”サバイバル”で培った経験や育てた感情を持ってしっかり前に進んでいたのだ。

一味違う人間になって、成長して夢の叶える場所に帰ってきた。

約7ヶ月間、精鋭隊として夢を貫いてきた。

けれど2018年10月12日、あまりにも早く精鋭隊は解散した。

 

 

一般から見た精鋭隊としての活動の結果はあまり良くなかったかもしれない。

彼女たちが予想していたものとは違っていたかもしれない。

惜しい気持ちは残っているに違いない。

 

だけれど、今まで散々と厳しい状況に耐えてきた彼女たちは、精鋭隊を応援してくれていた人達を愛し、愛してくれることに感謝していた。

愛し愛されることが当たり前でないことを知っていたのだ。

活動そのものに誠意を込め、たくさん泣いたり笑ったりした。

活動できること自体に幸せを感じていた。

彼女たちにとって、活動することは当たり前ではないからだ。

 

解散して、歩む道はそれぞれ別になっていく。

先が見えなくて、夢を続けられるかどうかわからない人がいる。

自分の元いたチームに戻って、精鋭隊として得たものを還元する子達もいる。

夢に終止符を打ち、新たな道へ進もうとする子達もいる。

その道は”サバイバル”や精鋭隊の経験がなければ開かれなかった道かもしれない。

結果や成績がどんなものであれ、

彼女たちの”サバイバル”や精鋭隊の経験が彼女たちの人生に良い刺激や影響をもたらしたことは間違いない。

 

愛されることで自信がつき、この先もそれぞれの道で頑張って幸せを掴みにいくのなら、私はこれからも応援していきたいと思う。

 

彼女たちに多大なる幸福が訪れることを、心から願っている。

 

ありがとう、UNI.T